自社でAI技術を活用したいものの、どのように進めればよいのか悩むケースは少なくありません。

導入には多大なコストがかかるため、外注を検討する企業が多いはずです。しかし、外注は自社にノウハウが蓄積しません。

一方、AIを内製化すれば、開発から運用までを自社で行えるほか、コスト削減や技術の蓄積が期待できます。ただし、専門人材の確保や育成、品質維持などが課題です。

本記事では、AI内製化のメリットとデメリット、自社開発の進め方を詳しく解説します。AI内製化に関する知識を身につけたい方、自社に最適なAI導入の方法を見つけたい方は、ぜひ最後までお読みください。

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AI内製化とは

AI内製化とは、企業がAIを用いたシステムやモデルの開発・運用・保守までの一連のプロセスを、外部委託せずに自社のリソースと技術で行うことです。これにより、AIに関する専門知識やノウハウが社内に蓄積され、変化するビジネス環境や市場のニーズに合わせて、迅速かつ柔軟にシステムの改善を実現できます。

また、外部ベンダーに依存しないため、開発コストの最適化や情報セキュリティの強化にもつながりやすいです。

AI内製化は、自社の業務内容やデータに特化したAIを構築し、持続的な競争優位性を確立する上で欠かせない戦略と言えるでしょう。

AI内製化の事例

AI内製化の取り組みは、さまざまな業界で進められています。

製造業では生産ラインの最適化や不良品検出にAIを活用し、自社で画像認識モデルを開発⇒品質管理を高度化する事例が見られます。

株式会社ブリヂストンではタイヤの製造にAIシステム「EXAMATION」を導入し、専門スタッフのスキル依存から脱却と一定の品質をもった生産を実現しました。

引用元:ブリヂストン独自のモノづくりICTを搭載 最新鋭タイヤ成型システム「EXAMATION」を彦根工場に初導入|株式会社ブリヂストン

金融業界では顧客データの分析に基づくパーソナライズされた金融商品の提案や、不正取引検知システムの構築にAIを内製化し、業務効率の向上とリスク管理の強化を図っています。

三井住友カードでは、コンタクトセンターへの問い合わせに対するメール回答の草案を、生成AIで作成する仕組みを構築しました。

引用元:三井住友カードとELYZA、お客さまサポートにおける生成AIの本番利用を開始|三井住友カード

また、小売業界では需要予測や在庫最適化、顧客の購買行動分析にAIを導入し、売上向上と顧客満足度向上につなげる取り組みが進んでいます。

これらの事例からみると、AI内製化は特定の業界に限定されません。さまざまなビジネスにおける課題を解決する手段として、広く普及しています。

AI内製化のメリット

AI内製化のメリットは、3つあります。

  • 運用にかかるコストを削減できる
  • 要件定義から運用までを自社で行える
  • ナレッジが蓄積する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

運用にかかるコストを削減できる

AIシステムを内製化すると、長期的な運用コストを大幅に削減できる可能性があります。

たとえば、外部ベンダーに開発や運用を委託すると、初期費用だけでなくライセンス料や保守費用が継続的に発生します。しかし、内製化すれば、これらの外部費用を抑えられるほか、自社のリソースでまかなえます。

その結果、ランニングコストの大幅な削減が可能です。

また、システムの改修や機能追加が必要になった場合も、外部に依頼する費用や時間をかけずに、自社で迅速に対応できます。そのため、コストを抑えた柔軟な運用が可能です。

要件定義から運用までを自社で行える

AIの内製化は、要件定義から開発、運用、改善までのプロセスを自社で一貫してコントロールできます。これにより、ビジネスの目標や現場の具体的な課題に合わせて、最適なAIシステムの構築が可能です。

外部ベンダーに依頼する場合と比較すると、認識のズレやコミュニケーションコストを減らせるだけでなく、スピーディな意思決定と開発を実現できます。

また、自社の業務フローやデータ特性を深く理解した上でシステムを構築できるため、AIが最大限の効果を発揮するよう最適化を進められます。

ナレッジが蓄積する

AI内製化は、AI技術に関する貴重なナレッジ(知識や経験)を社内に蓄積できます。

外部に開発を委託すると、プロジェクトが終了すると共にノウハウが外部に留まりやすいです。しかし、内製化を進めれば、開発プロセスを通じて以下の知見が社内に共有されます。

  • AIモデルの構築手法
  • データ処理の最適化
  • 運用時の課題解決策

これにより、組織全体の技術レベルが向上するほか、将来的なAIプロジェクトの展開や既存システムの改善にも応用できます。

このように、AI内製化は持続的なイノベーションの基盤構築に最適です。

AI内製化のデメリット

AI内製化のデメリットは、以下のとおりです。

  • AIエンジニアの採用と育成が必要
  • 精度の維持と改善を継続しなければいけない
  • システムの品質が担保されない可能性もある

それぞれ詳しく解説します。

AIエンジニアの採用と育成が必要

AI内製化を進める上での課題は、AIエンジニアの確保と育成です。

AI開発には、以下の高度な専門知識と経験を持った人材が欠かせません。

  • 機械学習
  • 深層学習
  • データ分析
  • プログラミング

しかし、これらのスキルを持つ人材は市場において希少なため、採用競争が激化しています。仮に採用できたとしても、自社のビジネスニーズやデータ特性に合わせたAI開発ができるようになるまでには、教育や実務経験を通じた育成の継続が必要です。

人材不足は開発の遅延や品質低下に直結する可能性があるため、内製化の障壁となり得ます。

精度の維持と改善を継続しなければいけない

AIシステムは構築したら終わりではなく、精度の維持と改善が欠かせません。

また、ビジネス環境やユーザーの行動、データの傾向は常に変化するため、それに合わせてAIモデルも定期的に再学習させたり、アルゴリズムを調整したりする必要があります。これらを怠ると、AIの予測精度が低下し、ビジネス上の効果が薄れてしまう可能性が高まります。

内製化する場合は、運用と改善のサイクルを自社リソースで回し続ける体制を構築しなければいけません。そのためには、専任チームや担当者の配置、モニタリングと改善活動が必須です。

システムの品質が担保されない可能性もある

AIシステムを内製化する場合は、外部ベンダーへの依頼と比較して、開発されたシステムの品質が十分に担保されない可能性も考慮しなければいけません。

外部ベンダーは、長年の経験やさまざまなプロジェクトを通じて培ったノウハウと、厳格な品質管理プロセスを持っています。一方、自社開発は設計ミスやバグ、セキュリティ脆弱性などが発生するリスクが高くなりやすいです。

また、テスト体制の不備や、運用後のトラブル対応能力の不足も懸念されます。

高品質なAIシステムを構築するには、適切な開発手法の導入や経験豊富な人材によるレビュー体制の構築が欠かせません。

AIを自社開発する場合の進め方

AIを自社開発する場合の進め方は、以下のとおりです。

  1. 要件定義と目的を明確にする
  2. 開発に必要な情報を収集
  3. モデルの開発
  4. システムの開発

それぞれ詳しく見ていきましょう。

要件定義と目的を明確にする

AIを自社開発するには、まず要件定義と開発目的を明確にしなければいけません。AIを導入して何を解決したいのか、どのような成果を期待するのかを具体的に設定します。

たとえば、顧客からの問い合わせ対応を自動化し、オペレーターの負担を30%削減するなど、定量的な目標を定めましょう。

この段階では、AIで解決できる課題とできない課題を整理し、現実的な目標を設定する必要があります。関係者間での認識を統一し、共通のゴールを持れば、その後の開発工程がスムーズになるはずです。

開発に必要な情報を収集

要件定義が明確になったら、AI開発に必要な情報を収集します。

  • AIモデルの学習に用いるデータ
  • 関連する既存システムの情報
  • 開発に利用する技術スタックに関する情報

特に、AIの性能を左右するデータは量にかぎらず質も欠かせません。データの偏りや欠損がないかを確認し、必要に応じて誤りや不整合、重複などを特定し、修正または削除などの前処理を行います。

また、開発に使用するプログラミング言語やフレームワーク、ライブラリなどの選定もこの段階で行い、開発環境を整備しましょう。

モデルの開発

開発に必要な情報が整ったら、AIモデルの開発に着手します。この段階では収集したデータをもとに、目的に応じて適切な機械学習アルゴリズムや深層学習モデルを選定し、学習させます。

モデルの選定で考慮すべきポイントは、以下のとおりです。

  • 解決したい課題の性質
  • データの種類
  • 計算リソース

学習済みモデルの性能を評価するには、精度や再現率、適合率などの指標を用い、テストデータで検証を繰り返します。期待する性能が得られるまでは、モデルのハイパーパラメータ調整や、異なるアルゴリズムの試行錯誤を繰り返してください。

システムの開発

AIモデルの開発が完了したら、システム全体の開発を行います。AIモデルは単独で機能しないため、既存の業務システムやアプリケーションと連携し、実際のビジネスプロセスの中で活用されるための基盤を構築しなければいけません。

たとえば、AIモデルが顧客の問い合わせに自動回答する場合、モデルをWebサイトやチャットシステムに組み込み、ユーザーインターフェースを開発する必要があります。

また、データ連携の仕組みやセキュリティ対策、運用監視ツールなども合わせて構築し、システム全体の安定稼働と信頼性を確保します。

AI内製化を図る上での注意点

AI内製化を図る上での注意点は、大きく分けると3つあります。

  • 野良AIにならないよう管理する
  • 生成AIに自社データを正確に判断させる調整を行う
  • AIの社会実装で重要としている3つのことを理解する

それぞれ詳しく解説します。

野良AIにならないよう管理する

AI内製化を進める上で、注意すべきは野良AIの発生防止です。

野良AIとは、特定の部署や個人が独自にAIモデルを開発・運用したにもかかわらず、社内の管理体制から外れてしまうAIシステムを指します。

このようなAIは、以下の不具合を引き起こす可能性があります。

  • セキュリティリスク
  • データガバナンスの問題
  • システム間の連携不足
  • メンテナンスができなくなるリスク

これらを避けるには開発におけるガイドラインを策定し、AIモデルの登録制度を設けるなど、全社的な視点での管理体制を構築しなければいけません。

生成AIに自社データを正確に判断させる調整を行う

生成AIを内製化する際は、自社データを正確に判断させるための調整が必要です。

生成AIは大量の汎用データで学習していますが、特定の業界や企業に特化したデータや専門用語を正確に出力をするには、追加学習やファインチューニングをしなければいけません。

具体的な作業は、以下のとおりです。

  • 自社の業務文書
  • 顧客対応履歴
  • 製品マニュアルなどのデータを用いてモデルを再学習させる
  • 特定の指示に対する応答の調整

これらを適切に行うと、期待できる出力が得られるでしょう。

生成AIが自社データを正確に判断できるシステムを構築できれば、業務の効率化や顧客体験の向上を実現できます。

AIの社会実装で重要としている3つのことを理解する

公益社団法人 私立大学情報教育協会は、AIを社会実装する上で3つの理念を尊重すべきとしています。

理念 内容
人間の尊厳 AIは人間の活動を支援し、人間の幸福に貢献するツールとして常に人間の尊厳を最優先する
多様性・包摂性 AIのメリットをあらゆる人々が得られるよう、誰もが取り残されない社会の実現を目指す
持続可能性 AIの利用が社会と環境に良い影響を与え、持続可能な発展に貢献するよう努める

これらはAI技術が社会に受け入れられ、信頼されるために欠かせません。内製化を進める場合は、それぞれの倫理的な側面も考慮に入れ、持続可能なAI開発と運用を目指す必要があります。

まとめ

AI内製化は運用コストの削減をはじめ、要件定義から運用までの一貫したコントロール、ナレッジの蓄積などのメリットをもたらします。一方で、AIエンジニアの採用と育成、精度の維持と改善、システム品質の担保などの課題もあります。

自社開発を進める際は、要件定義と目的の明確化からシステム開発まで、段階的に進行させなければいけません。また、社会実装で重要とされる基本理念の理解も必要です。

AIを賢く活用し、社全体の競争力を高める一歩を踏み出しましょう。

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